世界で最も多筆な著述家のベルギー人ライターであるジョルジュ・シムノンは、表向きは彼の創作的な人物の再編を特徴づけたメグレ警視の失敗に終わった追想記"Les Mémoires de Maigret"(Les Presses de la Cité パリ。英語では『メグレの回想』ハイネマン社 ロンドン 1978年)を1951年に出版した。「階段が次々と!」という英訳題(で、C・ポール・バレイラが私の留意を引いた)第六章は、1934年2月6日にパリで起こった親ファシスト暴動を描写する。それは、今日の北アフリカ移民とイスラミスト疎外を不気味に思い起こさせる。
政治動乱の間、より裕福なパリの地区で人間要素が共通に現れると記すことで、シムノンは始める。「そのまさに存在が概してそこでは知られず、幾ばくかの物乞いの出没が浮上してきたように、そして、中世の深さから現れている悪党と喉切りを観察しているかのように、窓から居住者は見ている」。これらの要素は「一群の狼ほどが彼らを囲むテロルを広げ」続ける。
その後、それが知られているかどうかを彼は問う。唯一の警察分隊は、
20区の郊外で暮らし、そこで野宿している二十万から三十万人の北アフリカ人、ポルトガル人、アルジェリア人にのみ関心があった。我々の言語を殆ど知らず、あるいは全く知らず、他の法律に従う人々は、我々自身の反映以外だと、むしろ言ってもよいのか?
そして、これら移民の多くが同化されることを望む反面、「彼らを取り巻く群衆には気づかれないで、集団として、あるいは個人としてであれ、わざと周辺に留まり、彼らの不可思議な暮らしを導く人々もいる」。
[コメント]
(1)追想記は創作であるものの、この描写は現実主義の空気を漂わせている。
(2)フランスにおける今日の問題が、既に80年以上前に存在したものに類似していると考えることは、何と著しいことだろう。
(3)まさにその時代の教訓が学ばれなかったように、この時代の教訓も学ばれていない。
(2016年1月3日記)