[『ワシントン・タイムズ』紙の題目「なぜ合衆国とイスラエルのハネムーンはあまり長くは続かないかもしれないのか」]
トランプ大統領は、イスラエルにとって非常に好ましい二つの先行なき手段を取ってきた。エルサレムを首都と認識すること、ユダヤ人国家を除去するために究極的に献身する組織である国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金をカットすることである。長らく懸案だったこれらの行動は、ほぼ70年近くに遡る時代ものの停滞を打ち破り、パレスチナ・イスラエル紛争を解決するための新鮮な機会を提供する。これらの勇敢な手段を取って、その後堅持するために、従来の型にはまった思考の攻撃による打撃に耐えているトランプに喝采を。
そうは雖も、問題がある。両方の動きは、誤った理由であるように思われるもののために、着手されたのだ。これは、抽象的な懸念ではなく、今日の祝賀が明日の失態へと転換するかもしれないことを含意する。
第一の問題は、イスラエルのためである。エルサレム問題を解決するために、エルサレムをイスラエルの首都だと認めたと、トランプは言っている。これについて熟考する彼に耳を傾けよ。「[イスラエルとパレスチナの交渉者達が]話さなければならない最も困難な主題は、エルサレムだった。我々はエルサレムを議題から外したので、それについてもはや話す必要はない。過去のエルサレムを得なかったのだ」。
まるでこれがニューヨークの不動産取引であるかのように、彼が区画規制あるいは組合代表に関して裏取引をしたかのように、紛糾したエルサレム問題を承認が解決したとトランプが考えていることを、これは示唆する。しかし、そうではない。「議題から外」れているどころか、トランプの行動は、エルサレムを注目と論戦の先行なき中心にしたのだ。
もしニッキー・ハレイの拒否権行使がなければ、国連安全保障理事会は満場一致でエルサレム承認を非難したことであろう。 |
例えば、国連の安全保障理事会と総会の両方の加盟国がしたように、イスラーム協力機構の加盟国は圧倒的に彼の手段を非難した。加えて、承認はイスラエル人に対するパレスチナ人の暴力を三倍にする原因となった。それ故に、トランプはエルサレムを、従来そうだったよりも、もっと係争中の問題にしたのである。
トランプは、エルサレムが非常に大変に「議題の上に」あるままであること、彼の壮大なジェスチャーが意図したものからは逆効果を持ったことを事実上、悟る時、どのように反応するだろうか。私の予測は、不満と激怒で、エルサレム承認とイスラエルに関して彼を気難しくするかもしれないというものである。この気まぐれで突拍子もない人物に、承認を撤廃するよう促しさえするかもしれない。
第二の問題。トランプは、承認のために、「イスラエルはその対価を支払うだろう」し、それが「更に多くを支払う必要があったことだろう」と述べつつ、イスラエルから明示されていない対価を強要することを意図している。目下のところ、アメリカの調停をボイコットし、個人的にトランプを中傷しているパレスチナ当局(PA)と共に、その対価は停止状態のままである。しかし、アメリカのドアは永久にパレスチナ人に開かれているし、彼らが気づく時、幾ばくか信じられないほどの贈り物が、ホワイト・ハウスで彼らを待ち受けている。(このイスラエルからの「見返り」(quid pro quos)を引き出す原動力は、なぜ私が概して、ワシントンとエルサレムの間の燻った緊張の方を好むかを説明する。
第三の問題。イスラエルに対してパレスチナ人を掻き立て、ユダヤ人に対する暴力を奨励し、汚職に従事し、難民人口を(縮小するよりもむしろ)拡大するという1949年以来の記録のために、忌まわしい組織を罰するために、予定された1億2500万米ドルのトランシェからUNRWAからの6500万米ドルを、トランプは保留しなかった。むしろ、イスラエルとの交渉を再開するようパレスチナ当局に圧力を掛けるため、彼はそのお金を差し控えたのだ。トランプがツィートしたように、「もはや和平を喜んで語ろうとしないパレスチナ人と共に、なぜ我々が彼らに膨大なこれらの将来の支払いの幾ばくかをすべきなのか?」
それで、ひとたびパレスチナ当局指導者のマフムード・アッバースが、エルサレムを巡る延長された苛立ちを乗り越えて「和平を語る」ことに同意するならば、彼を待ち受けている一群の利益がある。エルサレム承認の逆転の可能性、信じられないほどの報奨、そして、十全の、ひょっとして拡大さえされた合衆国の資金の再開である。その点で、教皇、首相、皇太子、そして『ニューヨーク・タイムズ』紙は、照り輝いているトランプを祝すだろうし、イスラエルは、嫌われて自身が冷淡に押しやられているのを見出すだろう。
アッバースは既に、ハマスのライバルと同程度に、まさに手強く不快で妄想的である過激化したパレスチナの国政を示しつつ、いずれにせよ、内部の消費のために、芝居じみたものから、少し後退してきた。勿論、アメリカ合衆国がイスラエルに譲歩するよう圧力を掛けられる唯一の権力であることを、彼は充分に知っている。それで、適切な間隔の後に、アッバースは容赦なく、謝罪をつぶやき、気前よくトランプを称賛し、パレスチナ人の多数の代理人を奮い立たせ、イスラエルと「和平を語」り、政権の好意を持たれるようにこっそり侵入するだろう。
2018年1月29日にガザ市にて、資金カットという合衆国の決定にUNRWAの雇用者が抵抗した |
それが起こる時、現行の合衆国とイスラエルのハネムーンは、ワシントンがイスラエル人に「和平のためにチャンスを取り」、「痛みを伴う譲歩をし」、それらの圧力に抵抗することを欲している通常の激論に置き換えられて、恐らくはおじゃんになるだろう。
過去に私は、トランプに関して何度も誤ってきた。今回も自分が誤っていることを希望する。
・パイプス氏(DanielPipes.org, @DanielPipes)は中東フォーラムの会長である。© 2018 by Daniel Pipes. All rights reserved.
『ワシントン・タイムズ』紙の本稿用のグラフィック |