1971年から1977年のうち3年間をカイロで暮らした私は、イスラーム文明の古典テクストである、販売人が呼ぶところの'turath'あ るいは伝統を求めて、法外な長い時間を街の本屋で過ごした。しかしながら、これらの文化的宝石を探し出す傍ら、時事問題、イスラエル、ユダヤ人、合衆国、 アメリカ人、西洋、クリスチャン、オリエンタリスト、その他の対象に対する醜い大言壮語に関するアラビア語の本の、けばけばしく陰惨なタイトルと表紙を、 私はほとんど見逃すことができなかった。
ある旅行者から、カイロの本屋で最近撮った昨今の本の表紙の写真を受け取った時、この思い出が頭に浮かんだ。狂おしい目、急進派、節度なき、悪質の何物でもなかった。ここに、私の英訳付でサンプリングを列挙する。(表紙のフルサイズ版を見るには写真をクリック)
『ハルマゲドン―現実か幻想か』 |
『ビン・ラディン―アメリカの殺人鬼』 |
『黒水―抑圧の軍隊』 |
『抵抗と解放の文化』 |
『華氏451度』 |
『イスラームとアメリカ人支配の西洋』 |
『西洋思想の中のイスラーム』 |
『モサドのエジプト浸透』 |
『アフガン戦争を証言するハニ氏』 |
『インティファーダ時代の目撃者アフマド・ヤシン師』 |
『大統領宮殿のスパイ』 |
『大中東』 |
『イスラエル・ロビー』 |
『ユダヤ人と国家』 |
『ユダヤ表現の難問』 |
『敵対者(によって見られたものとして)のクルアーン』 |
『ユダヤ人暴力の根源』 |
二種類の『我が闘争』と『アドルフ・ヒトラーの別の顔』 |
『アメリカは中東のために何を欲するか』 |
『シオニスト指導者達』 |
[コメント]
(1) 外国人の目には笑いを誘う一方、こういう本や表紙は真面目に受けとめられなければならない。というのは、アラビア語のみを使用するエジプト人達の精神世界を定義しているからだ。
(2) 上記の一冊『イスラエル人ロビーとアメリカの外交政策』(その題全体の引用)は、格別の興味を引く。ジョン・J・ミアシャイマーとスティーブン・M・ウォ ルトの著作『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』の翻訳だ。「イスラエル・ロビー」から「イスラエル人ロビー」へという、微妙だが重要な変化に注目 せよ。前者は、イスラエルのためのロビーを意味し、後者はイスラエルによってなされるロビーだ。二人が骨折ってつけた区別だ。その本の中身を、翻訳がどの ように多くの他の方法で歪曲するか不思議だ。さもなければ、著者の意図を丸裸にするとでも言うべきか?