まず、オラン・アスリという用語の定義から始めよう。
オラン・アスリとは、マレーシア半島の少数先住民族である。マレー語では、「原初の人々」「最初の人々」として字訳されている。人類学者や行政者達によって導入された集合用語である。18のサブ・エスニック集団が、公的な目的で、ネグリト、セノイ、原マレーという三種類に一般に分類された。1997年には10万5千人を数え、国の(マレーシア)人口の僅か0.5%に相当する。
クランタンはタイの南から見て西域にある州である |
これは、クランタンのオラン・アスリ達を改宗させるキャンペーンの一部をなすものである。なぜならば、ハッサン・マハムードは、彼らの改宗があまりにも遅いと思っているからである。「州政府が宣教成果に不満なので、この動きが起こりました」と、彼は報道陣に述べた。「2005年のデータは、クランタン州の1万2000人のオラン・アスリ人口のうち、イスラーム改宗したのはたったの2,094人だということを示しています」。
PAS指導者のマーフズ・オマールは、その計画を支持した。「お金と住居と車は、若い夫婦を助ける唯一の方法であり、差別ではありません」。(与党の国民戦線党)議員の一人、サウフィ・デラマンは、そのプログラムを疑問に付したが、予期せぬ理由からであった。華人やインド系と結婚したムスリムについてはどうなのか、と彼は問う。「彼らだって、オラン・アスリのようにマレーシア人じゃないのか?」しかし、彼らは助成金を受け取っていない。
それ以上に、(Suhakamと略称で知られている)マレーシアの人権委員会は、権力乱用だとして、これらの金銭による動機づけに抗議してきた。ダトッ・デニソン・ジャヤソーリア博士は、経済社会文化の権利委員会の議長であるが、次の声明を出した。
結婚によってオラン・アスリ女性を説教者達が改宗させるための動機として、金銭的な誘因によって州の財源を利用することは、権力の乱用であり、特に、思想、良心、信教の自由という基本的な権利の侵害である。…マレーシア社会で、特に大変に弱く周辺化された女性達を改宗させるための誘因や報償は、反倫理的であり、いかなる宗教的見地からでさえも受け入れられ難いものである。
彼が述べるには、むしろ、州はこの貧しい共同体を、経済や教育の活動を通して、エンパワーするよう助けるべきである。人権弁護士のA・シヴァネサンは、クランタン州政府が行き過ぎだったと同意した。「報酬制度は、汚職の一形態であり、納税者のお金の浪費です」。
支払いは実現するのだろうか。お楽しみに。(2006年6月28日記)
2006年11月8日追記:マレーシアの結論はわからないが、ブルネイ発のとっておきの話がある。ロスリ・アビディン・ヤフヤとハジ・モハマド・ザイデ・ハジ・ダミトによる「未完成の家をめぐる改宗者の非難」という話は、その意味するところほど、あまりおもしろくはないが。判明したのは、次の通りである。
ある改宗ムスリムが主張するには、約1万3千ドルを自払いしなければならないという。無償で居住するために、彼と改宗した家族に与えられたはずの家を完成させるためだ。言われた額を支払わなかったので、工事請負人が住居を完成させなかったというのである。「屋根裏は覆われず、階段は木でできており、指定したようなコンクリート造りではありませんでした。トイレの床もコンクリートで覆われてはいません」と彼は言った。住居は、約4万9千ドルかかったが、契約人は充分な支払いを受け取っておらず、従って、完成させるのを拒んだというのである。「家が完成するのを見るためには、自分の貯金を使わなければなりません」と、彼は言う。また、家屋の電線を完成するお金を手渡す必要もある、と付け加えた。
コメントを求められた際、宗教省の担当役人は、住宅建設の全額は省によって伝えられるだろうと述べた。「しかしながら、そのような助成を受け取るためには、申請書が必要です。ムスリムではない家族と別れて暮らす人およびその家族のための、幾つかの約定および条件を満たすものです」と、役人は述べた。
[コメント] このニュース項目で目立つのは、ブルネイ政府がイスラーム改宗に補助金を支給しているという安易な仮定である。