カリフォルニア大学バークレー校のフォード名誉教授(政治学)、コロンビア大学の兼任教授(政治学)、アメリカ政治学会の前会長、ジェームス・マディソン賞の受賞者、アメリカ人文科学アカデミーの研究員-このように、ケネス・N・ウォルツの栄誉は多方面に及ぶ。そして、評価の高い本をたくさん書いてきた。
だが、ウォルツは『フォーリン・アフェアーズ』2012年7-8月号に、イランの核兵器追求についての、伝えられるところによれば真面目な戦略家による、ただ最も途方もない分析をも公表した。その記事の題目と副題「なぜイランは爆弾を入手すべきなのか:核バランスが安定を意味する」が、彼の議論を手際よく要約している。外交問題評議会(CFR)の会員宛の書簡に、役立つようまとめられたものとして、イランの爆弾を欲している彼が挙げる三つの至宝のような理由を、ここに列挙する。
中東における軍事力のもっと安定したバランスを生み出すことであろう。「イスラエルの地域的な核の占有は、過去40年間、驚くべく耐えられる程に証明されてきたものだが、それが中東の不安定さをずっと刺激してきた…昨今の危機に最も貢献してきたのは、イランの核の所望ではなく、イスラエルの核兵器庫なのだ…事実、軍事力の不均衡を縮小することによって、新たな核保有国家が、一般に地域や国際的な安定を生み出すのであって、安定を減ずるのではない」。
イランの核兵器を促すケネス・ウォルツの記事のために『フォーリン・アフェアーズ』が掲載した賢い挿絵
イスラエルとイランの間で戦争リスクを減らすことになるだろう。「もし、イランが核に向かえば、核の力を常に有するので、イスラエルとイランは相互に牽制するだろう。二つの核武装国家の間で、全面戦争は一度もなかった。ひとたびイランが核の敷居をまたげば、戦争抑止が適用されるだろう。仮に、イランの核兵器庫が比較的小さいとしても」。
もっと警戒するイランを生み出すことだろう。「歴史は示している。諸国が爆弾を獲得すると、ますます攻撃されやすくなると感じ、核兵器を持つ自分達が、大国の権力にとって潜在的なターゲットになることを、敏感に気づくようになる。例えば、毛沢東の中国が、1964年に核兵器を獲得した後、なおさら好戦的にはならなかったし、インドとパキスタンが核に向かって以来、共により警戒するようになった」。
[コメント]
(1)イスラエルの核占有が、中東の不安定さを刺激したって?世界の終末を思わせるイランの指導者達が、抑止論によって思いとどまるか、もっと警戒するようになるだって?明らかに、ウォルツは、アラブ・イスラエル紛争やイラン・イスラーム共和国について何も知らない。黙っていれば自分のためになっただろうに。
(2)こんなくだらないものを出版する『フォーリン・アフェアーズ』は、何を所有したのか?さらに驚くべきことには、どこの天才が、これを表紙の大げさな見出しにすると決めたのか?
(3)この記事は、あの瞬間を思いつかせる-ジョン・J・ミアシャイマーとスティーブン・M・ウォルトの著書『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』に対する、このジャーナルの是認-もう一つは、外交問題評議会(CFR)の会員をやめたいという誘惑に激しくそそられる時だ。
(4)それにしても、またもや、あまりにも孤立化した象牙の塔の、胸が悪くなるような成り行きには、首を振らさせられる。(2012年7月1日記)