1997年頃から、年に二、三度、アル・ジャジ-ラに出演している。恐らく、決定的な事柄は、大統領選挙日である今日、起こったと言えるだろう。アル・ジャジ-ラが率いる討論番組『相対する見解』(Al-Ittijah al-Mu'akis , الاتجاه المعاكس)に、二人のパネリストの一人として出演した時である。エジプトのイスラーム主義者で反米のアシュラーフ・アル・バヨウミ氏と私が「アメリカの選挙」を論じた。その話題は、米国における民主主義の現状の一般分析へと、すばやく広がった。米国には民主主義が明らかに欠けていると彼は思っており、私は、力強く健全であるという立場だった。
アル・ジャジ-ラはトランスクリプト(私が自分のウェブサイトに再掲載したもの)を掲載した。中東報道研究機関(MEMRI)が、その後、その討論の最も華やかな場面を抜粋した。ビデオ・クリップと翻訳された抜粋として掲載されたものである。
「中東フォーラムのダニエル・パイプス氏と元エジプト人のアシュラーフ・アル・バヨウミ氏がアメリカの民主主義の本質を論じる」
アシュラーフ・アル・バヨウミ:60年代には、ベトナム戦争に反対する大衆運動があって、今日よりも、民主主義がましな日々でした。マッカーシーや極端な反共主義が、民主主義を悪い時代へと導いたのです。今日では、状況はマッカーシー主義よりも悪化しています。アメリカの民主主義は最悪です。アメリカ政権は、ファシズムやゲッベルスのような宣伝メディアに向かって社会を導いています。(米国は)民主主義の国ですか?
司会者:それは一体何ですか。民主主義ではないとは、どのような国ですか?
アシュラーフ・アル・バヨウミ:民主主義からかけ離れた国です。ファシズムに向かって行進しているのです。もしこの状況が続けば、アメリカは、もう一つの旧ソ連の最高行政委員会やナチ支配やゲッベルスのような宣伝メディアになるでしょう。このフォックス会社とは何ですか?誰がアメリカのメディアを所有しているのですか?誰が資金を出しているのですか?
ダニエル・パイプス:米国におけるムスリムに焦点を当てることは、重要かつ困難な問題です。そして、あなたと議論できることをうれしく思っております。疑いもなく、米国は、ヒンドゥ教徒や仏教徒やユダヤ人によっては脅されていませんが、ムスリムによって脅かされているのです。ムスリム全員ではありません。問題は、過激なテロリスト達がムスリムであり、これに対処しなければならないということです。
アシュラーフさんは、米国について何もご存じではありません。40年か50年ほど、ここで暮らしてきたかもしれませんが、この国について何も知らないのです。そして、これが、先入観を持ってやってくる移民の典型です。国そのものと関わることを避けるのです。
私は本当に望んでいますよ、バヨウミさん。あなたが、この国に忠誠を誓ったアメリカ市民として、この国から大きな利益を得た人として、魂を糺すことを。そして、アブドゥル=ナーセルから逃れる時、その人個人のために、この国がどれほどたくさんのことをなしたかを理解することを。バヨウミさん、恥を知りなさい、恥を。ここに来て、この国から益を得た後でそんなことを言うなんて。
[コメント]
(1)番組の出だしで、このようなやり取りがあった後、アシュラーフ・アル・バヨウミ氏について、すぐにインターネット検索をした。ガマール・アブドゥル=ナーセル時代にエジプトから逃げ、米国で教育を受けたこと、そして、米国で権威あるアカデミックな地位を満たしたことを、私は知った。手元のこの情報で、彼の発言に続いて、二度目に、米国に逃れの場を求めたことは、なんと不面目だったろうと、私は述べた。エジプトに戻って、私達のもてなし精神をそんなにひどく乱用し、主要なアメリカ憎悪の声となっているなんて、と。この番組を見た人から、アル・バヨウミ氏が、見るからに、このやり取りを楽しんではいなかったと、私は言われた。
(2)私は、アル・ジャジーラでよくある無責任なニュース報道に腹を立てているけれども、別の見解、特に私のような見解にも場を与えるという点では、アル・ジャジ-ラを評価しなければならない。
生放送の番組で、ある程度の時間、視聴者に声が届くような機会を与えられて、私は感謝している。(2004年11月2日記)
2005年6月28日追記: アル・ジャジ-ラの『相対する見解』に再出演した。今度は、ロンドンのスタジオで時間を取った。タリク・アリ氏と私が「アメリカの説明義務の法」("قوانين أميركية لمعاقبة الدول")を討論したのだった。アラビア語のトランスクリプトは、私のウェブサイト(http://ar.danielpipes.org/article/2728)と同様、アル・ジャジーラのサイトでも閲覧できる。アリ氏と私は、以前も口論したことがあった。例えば、2002年9月のオーストラリアのラジオ番組や1年前のオーストラリアのテレビ番組である。だが、今回は初めて、自分達でそのようにした。その雰囲気は、目に見えて、もっと楽しげであった。
私は、司会者の話すことをアラビア語で聞いたが、アリ氏と私は英語で討論した。困ったのは、アラビア語の翻訳では、私の言葉が台無しにされたことだ。一例を挙げると、最後の"أميركا لم تهدد باستخدام القوة منذ عام 1961" では、「アメリカは1961年以来、武力行使すると脅したことは一度もなかった」という馬鹿げた陳述を、私が言ったことになっている。実は、私が言ったのは、「アメリカ政府は、カストロが権力を握って以来、キューバをボイコットしたものの、1961年以来、キューバに対して武力行使すると脅したことは一度もなかった」というものだ。些細な違いだろうか?悲しいことだが、その翻訳は、他にも不正確さで穴だらけだ。