翻訳:Cristina Saori Asazu
“不道徳かつ野蛮なイスラエルの占領”の美辞(レトリック)を常に提唱するパレスチナ系アラブ人とはいえ、指導者をも含めるアラブ人でさえ、時にパレスチナ暫定当局よりむしろイスラエルの方がよいと認める時もある。ここにいくつかの事例をあげる。
暴力の抑制:パレスチナ警察の深夜の作戦で、ハマス支持者の家宅を襲撃した際に、当事者と70歳の父親を手荒く扱い、父親は警察に向かって「イスラエル人でさえこんな汚い真似はしないぞ」と叫んだ。脱獄した当事者は、パレスチナ当局(PA)の刑務所はイスラエル拘置所よりいっそうひどいと述べた。ヤセールアラファトの反対者によると、イスラエル軍は“まず催涙ガスを浴びせ、つぎにゴム弾を発射してから、ようやく弾薬を使う。でもパレスチナ警察は直ちに射撃する”と述べた。
法の支配:「イスラエル軍に真夜中にドアをノックされて嬉しくなる家族がいるなんて信じられますか」とガザの指導者Haydar Abd ash-Shafiは尋ねる。「ガザで接近戦が勃発したとき、人々は、イスラエル軍が定めた外出禁止令を歓迎したのだから」とも。また、ハマスのMusa Abu Marzouk氏は、アラファト議長とイスラエル人指導者達とを比べ、「イスラエルの野党代表者らはバラック首相を批判しても逮捕されないが、我々の場合、PAは直ちに逮捕する」と話す。
民主主義:1999年のイスラエル選挙での現職の首相落選は、パレスチナの評者を驚かせた。コラムニストらは、イスラエルの快報に注目し、「将来のわが国にも同様の政権誕生を望んでいる。イスラエル人をうらやましく思う」と述べた。Hasan al-Kashif、PA情報相総裁は、イスラエルの政権交代と、パレスチナで絶えず政権を支配する指導者達の著しい違いに注目した。テロ組織であるパレスチナ解放民主主義前線の指導者Nayif Hawatma氏は、イスラエルで行われるような決議及び賛否表示をPAに求めた。
少数派諸権利:パレスチナ政治がイスラムに偏向するにつれて、クリスチアンや非宗教的ムスリムは、イスラエルの保護を特に歓迎した。「パレスチナ国家の立国にあたって、シオニストと戦う為の神聖なる一致団結は消滅する。清算する時期が必ず来る。エジプトのコプト人やレバノン人のように苦労するかもしれない。こういうことを言うのは悲しいが、イスラエルの法律はわれわれをも守っている」とキリスチアンパレスチナ人は話す。
言論の自由:皮肉なことに、ガザ在住の弁護士Na'im Salama氏は、口頭名誉毀損の罪でPAから逮捕された。パレスチナはイスラエルの民主主義基準を採用すべきとした彼の勇気ある文書は、投獄を意味した。執拗な反イスラエル体勢をとる評論家Hanan Ashrawi氏は、「パレスチナの新政治形態誕生にあたって、イスラエル国家から何かを学ぶことがあるかもしれない」としぶしぶ認めた上で、「言論の自由のように、ある程度(パレスチナで)認められているが、全てにおける自由を(学ぶべき事例として)挙げなければならない」とした。有名な精神医学者でもあるHanan Ashrawiガザ地区精神療企画院長は、「イスラエルの占領当時、私は100倍自由であった」と嘆く。
経済的利益:イスラエル在住(エルサレムを含む)のパレスチナ人は、イスラエルの経済成長や社会福祉事業等を歓迎する。イスラエルの平均収入はウェストバンク、ガザ地区のおよそ5倍であり、社会福祉制度はパレスチナ側では類をみないものがある。イスラエルの国外に暮らすパレスチナ人は、イスラエルとの経済交流を望んでいる。防壁の完成がイスラエル政府から発表された時、ウェストバンクの隣町、Qalqiliyaの住民は「我々は大きな監獄に住んでいる」と激怒した。
この様なコメントは、選挙、法の支配、少数派諸権利、言論の自由、生活水準の向上の利点を訴えている。PAの政治的テロと過激主義の中、常態を望むパレスチナ選挙区が存在するということは有望的である。
残念ながら、このような選挙区は目立たず、政治的影響力は限られている。今こそ誠実なパレスチナ人が立ち上がり、イスラエルの存在は解決への新たな兆しであると主張していくべきである。