ウィリアム・マクニールの『西洋の台頭』は大傑作である。単一の著者による唯一の本当の世界史だ。スペングラーやトインビーとは違い、これは一人の男の風変わりな展望ではなく、人類経験の正確な要約である。それは、歴史についての私の理解を変えた。
ダニエル・ブーアスティンの『イメージ』(訳者注:日本語版『幻影の時代―マスコミが製造する事実』後藤和彦・星野郁美(訳)現代社会科学叢書・東京創元社(1964年))は、政治と日常生活における現実とイメージの間の相違を説明している。ある意味で他者に混乱させることを許さない。
ジョシュア・ムラヴチックの『民主主義の輸出』は、最近の傑出した書である。ムラヴチックは、無味乾燥で自明のトピックであるように思われるかもしれないものを魅惑的で深いものに転換している。
私自身の専門である中東は、良書よりも悪書をもっと鼓舞する。(そして、悪書はもちろん、イラクとの戦争の間、ベストセラー・リストを専有した。)オリジナルで奇妙で優れているムスリム史の三巻本の調査であるマーシャル・ホジソンの『イスラームの試み』とW・カントウェル・スミスの『現代史におけるイスラーム』(訳者注:日本語版『現代におけるイスラム』中村廣治郎(訳)紀伊國屋書店(1974年))が二冊の古典である。スミスは、過去二世紀の間のイスラームの深いトラウマ、そしてなぜそれが継続しているかを説明している。私は二つの最近の研究も推薦する。『エジプトとイスラエルの関係における文化と衝突』は、わくわくするようには聞こえないかもしれないが、このほとんど知られていない研究は、レイモンド・コーヘンの外交と国家間の関係における政治文化の目もくらむばかりの解釈である。ディヴィド・プライス=ジョーンズの『閉じたサークル』は、アラビア語圏諸国の政治で何が誤っていたかを厳しく告発する名人芸である。