トルコ政府によって最近取られた手段が示唆しているのは、ロシアと中国という全体主義的国家の一団のために、民主主義という北大西洋条約機構クラブを脱線させる用意があるかもしれないことだ。
ここに証拠がある。
(中国とロシア語の)上海協力機構 ロゴ |
一ヶ月後、トルコ首相レジェップ・タイイップ・エルドアンは、ロシア大統領ウラディーミル・プーチンに言ったと報告した。「さぁ、我々を上海ファイブに(正会員として)受け入れてくださいよ。そうすれば、欧州連合を考え直しますから」。1月25日にエルドアン氏は、欧州連合に参加するためのトルコの努力が失速したと述べつつ、この考えを繰り返した。「7500万人の首相として」と彼は説明した。「代案をあちらこちら探し始めています。だから私は、先日プーチン氏に言ったのです。『上海ファイブに我々を連れて行きなさい。そうすれば、欧州連合に別れを告げるでしょう』。失速のポイントは何でしょうか?」上海協力機構は「ずっとましです。(欧州連合よりも)もっとずっと強力で、参加国と価値を共有しています」と、彼は付け加えた。
2012年6月の北京における上海協力機構6ヶ国の長 |
1月31日に、上海協力機構の「オブザーバー国家」に昇格する計画を外務省が公表した。2月3日には、エルドアンが「我々は代案を探すでしょう」と述べつつ、上記の点を繰り返した。そして、欧州の「イスラーム恐怖症」をけなす一方で、上海グループの「民主化過程」を称賛した。2月4日には、アブドゥッラー・ギュル大統領が「上海協力機構は欧州連合の代案ではありません…トルコは欧州基準を採用し、施行したいと願っています」と宣言しつつ、話を押し戻した。
このすべては、帰するところ何になるのか?
上海協力機構の見せかけは、深刻な障害に直面している。もしアンカラがバシャール・アル・アサドを転覆する努力を導くならば、上海協力機構は、包囲されたシリア指導者をしっかりと支援する。北大西条約機構軍はシリアのロシア製ミサイルからシリア国を保護しつつ、パトリオット砲兵中隊を配置するためにトルコに到着したばかりだ。もっと深遠には、6ヶ国の全加盟国はエルドアンが信奉するイスラーム主義に強く反対している。それ故に、恐らく、欧州連合に圧力をかけるために、あるいは、彼の支援者達に象徴的なレトリックを提供するために、上海協力機構の会員のみにエルドアンは言及したのだ。
ロシアのプーチンとトルコのエルドアン: 似た者同士? |
いずれも可能である。だが、私は三つの理由で、深刻な半年に及ぶ考慮を取る。第一に、エルドアンは直言という記録を打ち立てた。ある重要なコラムニストのセダット・エルギンは、1月25日の声明を、恐らく彼のこれまで「最も重要な」外交宣言だと呼んでいる。
第二に、トルコのコラムニストのカドリ・ギュルセルが指摘しているように、「欧州基準は、民主主義、人権、労働連合、少数派の権利、男女同権、公正な所得分配、参加と多元主義をトルコに求めている。独裁者や専制君主に支配された国家連合としての上海協力機構は、参加するためにそのような基準を要求しないだろう」。欧州連合とは違って、上海の加盟国はエルドアンに自由化を押さないだろうが、あまりにも多くのトルコ人達が既に恐れている、彼の独裁的な傾向を奨励するだろう。
第三に、上海協力機構は、西洋を侮って西洋の代替というものを夢みる彼のイスラーム主義的な衝動に合致する。上海協力機構は、ロシア語と中国語を公用語とするのだが、深い反西洋的なDNAを持っており、会合は反西洋感情で充満している。例えば、2011年にイラン大統領マームード・アフマディーネジャードがその集団に演説した時、9.11が「アフガニスタンとイラクに侵攻したことと100万人以上の人々を殺傷したことの言い訳としての」合衆国政府の内部の仕業だという彼の陰謀論を、誰も拒否しなかった。多くの後援者はエジプトの分析家ガラル・ナサールの、上海協力機構が究極的に「国際競争を有利に解決する機会を持つだろう」という希望に共鳴した。反対に、ある日本人官僚が述べたように、「上海協力機構は、合衆国の同盟関係にとって対抗障害になりつつある。我々と価値を共有していない」のだ。
上海グループに参加しようとするトルコの手順は、前例のない2010年のトルコと中国の合同航空訓練によって際だって象徴化されたように、北大西洋条約機構におけるアンカラの今や曖昧な会員権を強調している。この現実を考えると、エルドアンのトルコはもはや信頼のおける西側のパートナーではないが、もっと内部の聖所における二重スパイのようだ。もし駆逐されないならば、少なくとも北大西洋条約機構から中断されるべきだ。
2013年2月6日追記: (1) ロシア・中国組織向けのさまざまな上海の綽名を最初に思いついた人は誰でも恐らく、英語では'to Shanghai'(上海する)という動詞が「(誰かに)何かをさせたり、どこかへ行かせたりする等の強制をするか騙すこと」を意味するとは気がつかな かっただろう。この準悪党の六重奏にとって何と適切なニュアンスであろうか!それが時代遅れの語彙でなかったならば、私はこのコラムを『上海しているトル コ』と題しただろう。
(2) エルドアンの見解について尋ねられて、欧州委員会のピーター・スタノ広報官は、他の選択が「投機的」なので、アンカラが欧州連合の努力を放棄するだろうと示唆するコメントに彼自身気づいていると言うに留めつつ、直接応答することを辞退した。欧州評議会のトールビョルン・ヤーグラン事務総長は、その見解を難なく切り抜けた。「私は間違っているかもしれませんが、エルドアン首相の見解は、実はヨーロッパ人にもっと建設的で肯定的な態度をトルコに対して取って欲しいという呼びかけを体現しているのです」。
(3) 野党指導者の中心である共和人民党のケマル・クルチダルオールは、2月4日に上海協力機構の切り出しを拒絶した。「上海協力機構の一会員になるという提案 は、一貫せず不正確です。我々は方向性を西洋に向けました。東洋ではありません。これは何か新しいものではなく、1071年以来、我々の目標は西洋に向か うことでした。西洋とは、地理を意味しているのではなく、近代化と文明を意味しているのです」。1071年に東アナトリアでマラズギルトの戦いが発生し、 アナトリアで初のチュルク軍の勝利を記した。「我々は現代化企画として欧州連合を理解しています」。
(4)なぜ欧州連合がトルコに参加資格を許さなかったのかについて、昨日エルドアンは説明をした。恐らく連合は「トルコが入り込んだら、加盟国が望 むものすべてをすることができなくなるのを躊躇し」たからだ、という。明快で穏やかにも驚くべき彼の含みは、次のようなことである。①トルコ人抜きのヨー ロッパ人は無責任である ② アンカラは欧州連合への入会を根本的に変える意図がある。
(5) 「この諸国と共に我々は北大西洋条約機構にいるのではないですか?」と述べつつ、エルドアンは同じコメントを続けた。ムスリム多数派国では唯一の北大西洋 条約機構の加盟国として、トルコは「(北大西洋条約機構の)誤った手段を止めるでしょう」と述べた。「だから、この手段は北大西洋条約機構にイスラエルが 含まれると見たのです。我々はそれを阻止しました。我々は自らの赤線を持っています。我々にとって、イスラエルと共に北大西洋条約機構に含まれることは決 して受容できません。そんな残酷な理解でいることは、我々の機構、歴史、文化と対立するでしょう」。エルドアンは、北大西洋条約機構からイスラエルを閉め 出したと主張するのみならず、北大西洋条約機構の決定的な役割を持つことを主張しているのだ―私が全く信用できると思うことだ。
エルドアンの上海切り出しとダウトオールの数日前の言い換え脅威「いかなるムスリム国に対するイスラエルの攻撃にも、トルコは無反応のままではいな いでしょう」に付け加えると、これらのコメントは、喜ばせることは何でも言えて、かなりのことができる、強情なトルコ指導者層を指し示している。そして事 実、できるのだ。
(6) 昨日のハンガリーでのコメントから判断すると、エルドアンは欧州人が考えることを、もはや気にしていないようだ。国際的に認知されたキプロ ス共和国について語りつつ、彼は公知した。「南キプロスは国家ではなく、一行政です。国としてのキプロスというものはありません。南キプロスというギリ シャ行政があり、グリーン・ラインの北に北キプロスというトルコ共和国があるのです」。